船津 準二(ふなつ じゅんじ)
山本幸三内閣府特命担当(地方創生・規制改革)大臣 特別顧問
全国47都道府県の東京事務所連絡会「暁の会」会長、
佐藤隆農相秘書官、元日本農業新聞勤務
日本農業新聞勤務後、佐藤隆農相時代には秘書官などを務め、全国47都道府県の東京事務所連絡会「暁の会」会長として、地方と行政、政府の間のつなぎ役も長年勤める。
現在は山本幸三内閣府特命担当大臣(地方創生・規制改革)の特別顧問として、日本創生へ向け、農山村の活性化へ農商工連携など、官僚、縦割り行政を超えた六次産業化などを通して、地方創生・日本再生に取り組まれています。
1月に、豊受オーガニクスレストランで由井大会長と会食した際に、日本再生のキーは、自然を中心としたやり方に戻る「原点回帰」であるとの結論にいたり、シンポジウムでは、そのエッセンスをお話しいただきます。
日本の潮流は、原点回帰に動き出してきた
Ⅰ.イントロ
①26年、秋の国会で「まち・ひと・しごと創生法」(地方創生法)が成立した。何回読んでも"へそ"が見えない。へそとは定義。過去、議員立法の下書きに携わってきた経験から、法律の目的に定義は必修だと理解していた。地方とは都府以外、という認識がインプットされていた。しかし、法律の対象には、財政力指数が1を超える東京まで入っていた。内閣府の当事者にこのことを質すと、「東京にも、農業・漁業林業・農山漁村ある」という。地方とは、農山漁村地域をイメージしたものであった。それならば、日本全国に地方があり、その地方は、日本創生の原点で、地方創生とは日本創生の原点を追求することと理解した。
②日本の町村数は、江戸時代から引き継いだものが71,314で明治22年の「明治の大合併」で市が39誕生、町村数は15、859に減少した。これを境に、日本の社会構造は、都市化指向へと一直線に進んでいく。昭和28年からの「昭和の大合併」・平成11年からの「平成の大合併」を経て、現在、市790、町745、村183に大変身した。農村地域を「地方」とするならば、大都市の中の地方、中核都市の中の地方、地方の中の地方に色分けされる。地方創生は、明治以降の過度な都市化政策の軌道修正と理解すれば、納得がいく。「小さな視点」「合併前の小学校区」「地域運営組織」などが地方創生のコアに提示されている視点は、日本創生以来根付いてきた社会構造そのものであった。そこに、政策の目が向けられたことは、一世紀余りを過ぎての「原点回帰」である。
③有機農業は、今や、農法の主流になりつつある。戦後まで体験した農法は、有機農法であり、1万2千年前に、植物の栽培に始まる農業革命以来、自然と闘い、或は共存してきた有機農法で生命を永らえてきた。この原理は、「土の輪廻」である。科学は、この自然の輪廻を遮断した。有機農法への回帰は遅きに失くした自然の流れである。
Ⅱ.原点回帰の担い手
社会の構成員あまねく存在する。中でも、未来永劫の課題は、我々が生きていく上での必修要件である「食」の世界である。これに関わる分野は広範多岐に恒る。この分野で、人生を掛けている人を多く知っている。自分の技術に自信をもち、頑固だが実直である(広辞苑)職人気質が生み出す果実は、常に人の笑顔が頭を占めている。人類平和の使者である。しかし、頑固故に協調性に欠け、一人でもがき苦しんでいる。社会の進歩は、職人の知恵と心意気が原点である。利益追求社会の中で衰退していく職人社会を取り戻す。そのために手をつなごう。
Ⅲ.ジャパン・ファースト
米トランプ大統領がTPP脱退に走っている。戦後、自由貿易を掲げて世界をリード、日本もその渦中の中で、裸の王様にさせられてきた。とくに、1960年の日米安全保障条約に「経済条項」(第2条)が新設されて以降、日本の貿易自由化は、急速に進み、「食」の分野でも日本古来の産物が大きく浸食されている。日本の土壌、自然で「食」をつくる職人は、農林漁業者である。TPP脱退は、日本主導のチャンスである。トランプのDNAには、アメリカ、オーストラリアなどの新大陸を植民化し、黒人を奴隷化し、先住民を追いやったイギリスを中心としたアングロサクソンの血が生きている。ジャパン・ファーストで「食」を取り戻し、生命の安心・安全を再構築する好機である。地方創生はその第一歩である
Ⅳ.岡目八目的処方箋
第三者的立場で物を見ることで物事の是非・利・不利が当事者以上にわかること(広辞苑)。職人が社会の認知を得るための心得である。良いこと、欠けていることも岡目八目で見、良いことはどんどん伸ばし、欠点は改善する。大量生産、大量消費時代の中で、職人の意気を貫き、社会をリードする。原点回帰の伝道者である。今、そんな時代に入っている。
Ⅴ・地方創生事業に合格するポイント
①申請者はあくまでも市町村行政機関である。県には審査権限がない。地方創生には県事業も入っており、県も国に直接申請し、審査を受ける。ただし、市町村の申請書の写しは県に提出する。
②国からの交付金は、事業費の2分1、残りは地元負担となるが、この負担分は、原則、起債(国からの借金)で賄い、国は、一般財源となる地方交付税で後年度、基準財政需要額に還付する。この場合も、起債の2分1にとどまり、残り2分1は、単位費用で措置する。これが基本型であるが、事業着手時に、行政が一括立て替えることになるので、議会の審議を経なければならない。
③国民の税金を交付することになるので、行政機関を経由する仕組み。NPO、一般社団法人、株式会社、任意団体など、地域おこしに専念している団体等は、国の資金の受け皿にならない、との判断。従って、市町村行政機関とタイアップすることが不可欠となる。
④地元の経済団体である農林漁業協同組合、商工会、商工会議所の支援を得ることも有力な手段となる。