「新たに露呈した農業破壊の構造とそれに負けない持続的農業の展望」鈴木宣弘(東京大学農学部教授)

「新たに露呈した農業破壊の構造とそれに負けない持続的農業の展望」
鈴木宣弘(東京大学農学部教授)

日本の農林水産業の現状、実態、問題点を事実に基づいて、わかりやすく、しっかりと解説されました。
まず、日本、中国、韓国及び東アジア10か国が参加している「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」の本質について明確に説明されました。
日本は農業の関税撤廃により自由化を図り農業を犠牲にして、自動車産業が利益を得るような内容になっています。食料は国民の命を守る安全保障の要であるのにかかわらず、日本にはそのための国家戦略が欠如しており、自動車の輸出を伸ばすために農業を犠牲にするという短絡的な政策がこれまでもとられてきました。
日本は、種の知財権の強化をRCEPに入れようとしましたが、東アジア各国では、農民や市民の猛烈な反発を受けて組み入れることができなかったということです。企業利益のために種の知財権を強化し企業から種を買い続けなければならなくなるためのしくみは、各国の農業従事者を脅かすものとなるからです。ところが日本では既に、種子法、種苗法の改正を既に行っているという現実があります。
保護主義に対して自由貿易、規制改革と対比されますが、実は「市民の命と権利を守る」ことに対して
「一部の企業の利益を増やす」ということなのです。
次に農地へのソーラーパネル設置の圧力が高まっているという問題が取り上げられました。
営農型太陽光発電の推進と言われていますが、本質は、農地を転用しやすくし、農地をなくして、太陽光発電のための企業参入を行い、企業が利益を得るというしくみを作るという流れです。
漁業においても漁業法の改定やゲノム編集の大規模養殖などに企業が参入し、利益を得ることができるしくみが行われています。
日本ではこれまでも農林水産業が犠牲になり、自動車、鉄鋼の産業が主体となるという政策が行われてきており、経済産業省の力が強いという各省のパワーバランスが如実に表れています。
最近、農水省では有機農業への取り組みの拡大として、有機農業の取り組み面積の割合を、現在2%に満たないですが、2050年までに25%(100万ha)に拡大するという画期的な数値目標を打ち上げました。
そのこと自体は素晴らしいことですが、有機農業の中身がどうなるのかという懸念もあります。遺伝子操作の一部であるRNA農業やゲノム編集等も有機農業として認めることにならないかということが想定されます。
「自然の摂理に従い、生態系の力を最大限に活用した農法は人にも生き物にも環境にもやさしく、持続性が高く生産性も高いのです。」
種から消費までの地域型循環型経済を確立していくことが大切です。いっしょに頑張りましょうということで 本日の説明が締めくくられました。

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