2021年2月27日 シンポジウム午後の部

<来賓発表>
鈴木宣弘(東京大学農学部教授)
「日本の食と農が危ない!―私たちの未来は守れるのか ~命の源の食料とその源の種を守る取り組みを強化しよう~」

日本の置かれている食と農の現状、実態、問題点を様々な観点から、事実に基づいて、わかりやすく、しっかりと解説されました。

現状の流れが続き、今後の貿易自由化が進展すると、最悪の場合、2035 年の日本の実質的な食料自給率がコメで11%、青果物や畜産では1~4%に低下する可能性があります。このように国内の食料自給率が低下した状態で、干ばつや感染症流行、災害や気候変動などが起こり、海外からの輸出規制や物流の寸断が生じたなら、日本人は食料そのものの危機に陥ってしまいます。

何が大切なのか?それは種を守らなければならい。そして、輸出や物流が止まっても国内の食料自給率を高めていかなければなりません。

本来「種は命の源」なのですが、今や「種は企業の儲けの源」となりつつあります。「種は企業の儲けの源」として、種の海外依存度の上昇につながる制度変更(種子法廃止、種苗法改定など)が行われ、海外依存度の高まりがコメや果樹でも起こる可能性があります。

現在、国民の命よりも特定企業の利益が優先される時代。国民の命を犠牲にしても、内外の特定企業(グローバル企業)の儲けを増やすために有利な制度撤廃・変更を行うのが「規制改革」や「自由貿易」の本質なのです。

また、世界的に農薬や添加物の使用・残留規制が強化されているのに日本だけが緩められ、危険な輸入食品の標的にされています。「今だけ、金だけ、自分だけ」の企業によって、政治・行政、メディア、研究が操つたられているのです。

安いものには必ずワケがあります。成長ホルモン、残留除草剤、収穫後農薬、遺伝子組み換え、ゲノム編集 などに加えて、労働条件や環境に配慮しないで不当に安くなったものは、本当の意味では、安くないのです。安心、安全、健康が侵されているのです。貿易自由化して安く買えばよいというのは間違いです。しかも、お金を出しても買えなくなる輸出規制のリスクの高さも認識する必要があります。

公的に「安全」とされていても EU などは独自の予防原則を採っています。消費者・国民が黙っていないからです。消費者が拒否すれば、企業をバックに政治的に操られた「安全」は否定され、危険なものは排除できます。

国の政策を改善する努力は不可欠ですが、それ以上に重要なことは、自分たちの力で自分たちの命と暮らしを守る強固なネットワークをつくることです。 農家は、 協同組合や共助組織 に結集し、 市民運動と連携し、 自分達こそが国民の命を守ってきたし、これからも守るとの自覚と誇りと覚悟を持ち、そのことをもっと 明確に伝え、消費者との双方向ネットワークを強化して、自身の経営と地域の暮らしと国民の命を守らねばならないのです。

種を守れば命を守ることができます。協同組合、共助組織、市民運動組織と自治体の政治・行政などが核となって、各地の生産者、労働者、医療関係者、教育関係者、関連産業、消費者などを一体的に結集して、地域を喰いものにしようとする人たちは排除し、安全・安心な食と暮らしを守る 、 種から消費までの 地域住民ネットワーク を強化 するために、「今こそ、それぞれの立場から行動を起こそうではありませんか」ということで 本日の説明が締めくくられました。

<事例発表>
井手麻子(JPHMA認定ホメオパス/日本ホメオパシーセンター山梨八ヶ岳)
「半農半X(エックス)」 これからの時代に備え 東京から山梨県八ヶ岳に移住し農業を始めました

山梨八ヶ岳センターの井手麻子ホメオパスがご自宅よりZOOMを通して発表されました。

半農半X(エックス)というのは半分は百姓で半分は自然療法家として活動しているという意味です。
「農業経験のない私が農家になった」ということです。

2011年に山梨県に移住し、不耕起栽培を学び、2014年に2反の田んぼを持ち、地元の農業協同組合に加入し、2015年に農家の資格を取得されました。

米と豆、塩と油、あとは野菜があれば、災害が来ても大丈夫ということで、米は化学肥料なし、除草剤を使わず、天日干しにしています。

「なぜ米を作るのか?」
それは、①生産効率が抜群に良く、2反のコメ作りで、年間140時間の労働(2人で)で、1反当り500KGの収穫があげられる。②保存性が高い③なんといっても主食であること

米さえあればあちこちに野草(ワラビやフキなど)が生えているから大丈夫とのこと。

ホメオパスにとっての私のとっての農業は ①体を動かし、安全な食を確保し、健康に寄与し
②自然の中に神を感じ、信仰心を感じる機会であるとのことです。

最後に全国のホメオパスに向けて「半農半ホメオパスになりませんか?」との提言がなされました。

<事例発表>
松本匡美(JPHMA認定ホメオパス、JPHMA認定アニマルホメオパス)
「動物達にも自然な健康を! ~酪農の現場を経験して。自らの先天性股関節脱臼を自然療法で克服して~」

酪農の現場を経験してきた 松本匡美アニマルホメオパスにより「動物達にも自然な健康を!」をテーマに発表していただきました。

産まれながらにして両足脱臼、股関節の悪い松本ホメオパスはホメオパシーを知りCHhomの学校に入学しました。その4年間で股関節は改善。卒業後は悲願の牛のホメオパスになるため、乳牛牧場に住み込みで就職しました。

そこでは、排卵受精は人が管理、主食は穀物を与えるなどの不自然な生活、そして病気だらけの牛がいる現実に、心に引っかかりを感じました。
松本ホメオパスは日常の酪農に追われながらも、サポートチンクチャーを症状別に準備して使っていくと、妊娠できたことなどもあり、体の症状もどんどん良くなる手ごたえを感じますが、そうすることで乳から固形物が出る好転反応が起こり、牛乳として出荷できなくなると牛舎から牛が消えていきました。そうすると松本ホメオパスの肘や膝が痛み、このような不自然な状態では自然療法を使ってはいけないと思い至り、乳牛牧場を退社。
その後は、自然療法と関わることも、大好きな牛の目をみることもはばかられ、体調不良続き、妊娠出産後に股関節痛が再発しました。

産地酪農で研修した牛たちは、人と助け合って自然環境で育ち、病気は青草を食べることで自ら治っていく。この体験も支えになり、トラウマになっていた松本ホメオパスが最後に「人も動物もストレスのなく自然な状態で暮らし、生きている時間を尊重されるように!」と願いを込め、そして「股関節痛を乗り越え、軽くなった足でいろいろなところに訪れ、前向きにやっていきたい」と発表を締めくくりました。

<事例発表>
金井美和(CHhomプロフェッショナルホメオパス養成コース9期生)
「ホメオパシー的百姓の実践~知識がないからできたこと~」

CHhomプロフェッショナルホメオパスコースに通う傍ら、地元山梨県甲州市で自然型農業を実践している、金井美和さんに「ホメオパシー的百姓の実践~知識がないからできたこと~」のテーマで発表していただきました。

CHhomにおいて、体や心や魂の事を初め、農業体験などホリスティックな学びを寅子先生から得ていくことで農業を始めたという金井さん。素人だった金井さんが始めたのは、ホメオパシー的視点で植物を観察することでした。

レメディーやマザーチンクチャー、御古菌を使いながら、「起こる出来事は全て必要あって起きている」と、虫がついたり、病気になったことの本当の理由を考え、土壌や環境をととのえ、作り手の感情をととのえ、種や自然に感謝の心を持ちながら取り組んだそうです。

これらの実践は、専門知識や経験がなかったド素人だったからこそ先入観なく、無謀と言われながらもチャレンジ出来たのだと。素晴らしい環境の農場の様子や生き生きとした野菜の画像、その野菜をおいしそうに食べるお子さんを見ながら、心が洗われるような発表となりました。

<自然農実践報告>
横田美沙(日本豊受自然農 函南グループ食品加工部)
「自然農の畑から安心安全な加工・保存食品を生み出す」

日本豊受自然農 函南グループ食品加工部の横田美沙さんからの実践報告です。

日本豊受自然農では、遺伝子組み換え・ゲノム編集・F1種を使用しない、古来からの固定種・在来種の種を自家採取、化学肥料・農薬を使用せず、植物発酵の力を利用し土壌菌豊かな天然堆肥をつくり、「安心・安全」にこだわった作物をつくっています。
そのこだわった作物をつかった加工品づくりももちろん「安心・安全」にこだわり、化学調味料無添加、昔ながらの製法による発酵食品をつくっているとのこと。

「自然農の作物をつかった加工の仕事つまり6次産業化は、自然環境・地球環境及び人々の生命力・知力を取り戻し、食糧自給率を上げ他国に依存・支配から抜け出すために重要な仕事。この仕事を通して、全ての人を幸せにすることが働く意義」と話されました。

また、様々な加工品がある中で、売上No.1の豊菌グルトを紹介。
豊菌グルトは、「御古菌」、豆乳・いりぬか・米糀などを発酵させた「自家製豆乳ヨーグルト」、米糀甘酒という全て豊受自然農で採り作られた商品で、腸の善玉菌を増やし栄養吸収しやすい本来の腸へと戻して行くものだそう。
横田さんは「善玉菌、悪玉菌、日和見菌と大きく3種類に分けらる腸内細菌ですが、悪玉といわれるものにも役割がある。大事なのは悪玉菌を排除する事ではなく共存するバランス。
この世界も腸内細菌同様、それぞれの人に大切な役割がある。豊受自然農から、何者も敵に回さず、調和した新しい生き方の価値観を広げていけると信じている」と笑顔で朗らかに話されました。

最後に、「自分一人に出来る事はそう多くないですが、言い換えればその中に自分の探す答えがある」という言葉も伝えられました。
食を変えることで腫瘍が消滅した体験をされた横田さんの言葉は、多くの方々に深い感銘を与えたことでしょう。

<自然農実践報告>
金光直人(日本豊受自然農農業部 函南農場)
「豊受黒田五寸 固定種人参の成長について」

 

日本豊受自然農農業部の実践報告は静岡県函南農場の圃場からライブ中継をつないで、青空や風の音など臨場感たっぷりに行われました。

まずは根菜類や葉物の担当をしている金光直人さんから「豊受黒田五寸 固定種人参の成長について」の発表です。

黒田五寸人参の種取りや種まき、間引きや収穫の様子が動画も交え紹介され、
「種を自家採取することで自然はまた翌年には私たちに十分な量の野菜を提供してくれる。まさに由井会長が「農業は錬金術だ」という言葉通り。収穫したものは自分たちで独占せずにみんなで分かち合う、その気持ちを忘れないことが大事だなと感じる。」と話す金光さん。
また、「5ミリにも満たない非常に小さな種の中に大きな人参となるすべての情報が入っている。種まきをしているときはいつも、人智を越えた神秘性を感じずにはいられません。」とも。
金光さんはじめ農業部スタッフが精魂込めて愛情を込めて育てた黒田五寸人参は豊受自然農の食品だけではなく、ファンデーションなどにも使われています。

最後に、「植物はゲノム編集など安易に遺伝子を操作され人間の道具とされている今、どのような生産者が、どのような気持ちで、どのようなやり方で野菜を作っているか、信頼できる生産者を見つけてその気持ちを感じながら作物を味わっていただけると野菜も喜ぶと思います。それが豊受自然農の野菜だったら大変うれしいです。」と締めくくりました。

農業という聖の仕事に日々関心を持って感銘しながら従事されている真摯な様子が伝わるとても温かな発表でした。

<自然農実践報告>
小林且幸さん、白井天斗さん(日本豊受自然農農業部 函南農場)
「豊受大豆・麦類の栽培について」

同じく函南農場の圃場から中継をつないで、日本豊受自然農農業部から 小林且幸さん、白井天斗さんによる「豊受大豆・麦類の栽培について」の実践報告です。

はじめに小林さんから大豆栽培のお話。「蒔く時期というのがとても大事。草取りにも収穫量にも大きく影響する」なのだそう。機械も使いながら手刈りもも行い、昨年は1.6トンの大豆がとれたとのこと。
小林さんは「競争社会・分断社会の現代、自分達がよければそれでいいというエゴではなく、利他の心を持てるように修行していきたい」と真摯にお話されていました。

次に白井さんから小麦栽培の報告。今年は種まきがうまくいき今後の収穫に期待が持てるとのこと。収穫の出来は大豆同様種蒔きが重要であると同時に、土壌の攪拌を担う中耕作業が重要なのだそうです。

農業部を代表してお話された小林さん、白井さん。日々の農業のお仕事に真面目に正直に向き合っている様子から、だからこそ豊受自然農の作物は安心安全で滋味深いものなのだと感じられた発表でした。

<自然農実践報告>小山内秀孝、米丸輝久、澤田美史、デイリー・マット(日本豊受自然農 北海道洞爺農場)
「北海道 大自然の中から取り組む自然型農業、六次産業化の報告」

日本豊受自然農 北海道洞爺農場からはライブ中継での発表となりました。

小山内さんからは北海道の大自然の中にある洞爺農場が取り組んでいる、自然型農業での六次産業化についての報告を頂きました。洞爺農場には沢山の森の木々があり蒸留水や精油、薪の備蓄をしているとのこと。山の中を上がったところには湧水地もあり、ほめ水や、蒸留水や精油、野菜やハーブを育てる水としてとても大切な資源になっているそうです。

米丸さんは実際に焙煎しながら発表されました。チコリーの根は寒さに備えるためしっかりと糖分をため込み、石窯で丁寧に焙煎されこんがりと焼きあがるそうです。このチコリーを原料として大人気のチコリラテ、チコリコーヒーゼリー、農61クッキー(チコリー)が作られているのだそうです。

澤田さんは蒸留所からの発表で、蒸留の工程を説明いただきました。トドマツの蒸留水や精油を使用した商品として「菌は菌で愛する」「浄化の木」「生命の木」蒸留水、精油の単体があります。その他各種蒸留水、精油、ハーバルスピリッツウォーターなども商品化されています。自然の力、香りで癒されるのでぜひお使いになってみてください。と締めくくられました。

マットさんは冬にハーブティーを作っているとのこと。洞爺農場では11種類のハーブティー用のハーブがあり、さらにスパイスハーブ、ハーブソルトがあるそうです。一番人気である由井会長のオリジナルブレンドのバイタルハーブティーは10種類のハーブと花が入っているそうです。

洞爺で作られた大人気のフェイスチョコレート、今開発中の豊受の豆乳チーズの紹介もありました。これからの洞爺農場の取り組みがますます楽しみになる発表でした。

<来賓講演>柴原 薫(伊勢神宮の御神木を伐る杣(そま) 南木曽木材産業社長)
「日本の林業の現状と出口戦略」

伊勢神宮の御神木を伐る杣(そま) 南木曽木材産業社長の柴原薫様に「日本の林業の現状と出口戦略」をテーマに講演をしていただきました。

伊勢神宮の20年にご遷宮にも関わる「きこり」として現在も活動をされている経験から、伝統や技術の伝承に関する大変興味深いお話をいただきました。
そして、日本の林業の現状を様々な実例を交え詳しく解説していただき、現在の苦境や抱える矛盾点などを知ることができました。
最後には、100年のスパンで物事を考える”森をつくる人間”として「安い事はうれしいけれど、正しくはない」その価値観を持って生きていきたいと、我々全ての生活者に向けても心に刺さるメッセージで締めくくっていただきました。

<来賓講演>
印鑰 智哉 (世界の食問題研究家)
「種子、農、食が持つ力」

たね、農、食が持つ力

印鑰氏は農業が今の危機をすくうかどうかの根幹にあるとし、新型コロナの問題、気候変動の問題、生物多様性の問題等、工業的な農業がこういう危機をおこしていると指摘された。

化学肥料を入れると成長が早いが、土壌菌が活性化せず、土が変わってしまう。
同じことが体の中にもおきている。
腸内細菌が体を支えているが、その腸内細菌が壊れていっている。

糖尿病の蔓延、アレルギー。

病気や、気候変動、土が無くなる
自然農を取り戻すことによって
食を変えることによって
生態系の力をひきだしていく。

日本の有機農業は世界的に遅れてすぎている。

政府はゲノム編集と有機農業を同時にすすめることをやっている。
これでは、政府に期待することはできない。
やはり、地域から農業と食を変えていくしかない。
まず、学校給食を変えていくことが大切。
学校給食を自然農に。
そうするとその地域が変わってきて、そこから変えていくことできるだろう。
と、問題点とこれからの私たちのやるべき点を明確にしてきされた。

 

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