【来賓祝辞】Dr.ラジ・クマー・マンチャンダ博士(デリー連邦直轄地政府 AYUSH局長)

今年の来賓祝辞は、デリー連邦直轄地、AYUSH(インド伝統医学)局長の「RKマンチャンダ博士」からメッセージ動画を頂きました。
マンチャンダ博士は冒頭で、『今、食が危ない!自然農の復興』という今回のシンポジウムのテーマが、今、世界で起こっている食の危険を減らす事に貢献することにつながるテーマであると賞賛。インド政府として、超加工食品とも呼ばれる化学加工食品が栄養価がほとんどなく、体を害する食品添加物が多く使われ、多くの人々がこれらの影響で食原病に苦しんでいる事実を指摘。インド伝統のアーユルヴェーダ科学では、食は生命を支える 3 本の柱の 1 つとし、毒の入った食品によって引き起こされた疾患、そして、その様な食品摂取によって生じる症状の管理療法も指摘。「何を食べる必要があり、何を食べないでおくべきか」がその原典に記載されていること。更にオーガニックな食品が最適な健康状態を維持し、慢性疾患を発症するリスクを軽減するのに貢献しているとの見解を示す。最後に由井寅子博士が、日本でホメオパシー療法のクライアントにだけでなく、一般の方々にも自然農やオーガニックな食品の大切さを教育するために今回で15回目となる「日本の農業と食を考えるシンポジウム」を毎年開催している活動を称えた。(※祝辞全文日本語訳と参考文献は後掲)
インド政府は、ホリスティックな7つの伝統医療体系、すなわちアーユルヴェーダ(A)、ヨガ、ナチュロパシー&食養(Y)、ユナニ医学(U)、シッダ医学(S)、ホメオパシー(H)=AYUSHを現代西洋医学と対等な国の第一医学として推進。現モディ政権は2014年にAYUSHを省へと昇格した。

マンチャンダ博士は35年以上ホメオパシー学術、教育に関わっており、「多くの論文」を発表しており、現モディ政権下、インド政府AYUSH省の「ホメオパシーリサーチ中央研究所(CCRH)」の長官を務めた後、デリー連邦直轄地政府でAYUSH(インド伝統医学)局長を務め、AYUSHを使った新型コロナ感染症の予防と治療対策の普及などにも関わる。2023年4月10日のインド政府主催「世界ホメオパシーDay」学術大会では、これからのホメオパシー普及の戦略について発表する。

マンチャンダ博士と由井大会長との親交は「2005年にスマトラ沖地震津波被害での被災者支援活動を行うインドのホメオパシー団体の義捐と学術交流に遡る」。その後、マンチャンダ博士が長官を務めていた「インド政府AYUSH省ホメオパシーリサーチ中央研究所(CCRH)」と由井大会長が会長を務めていた日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)は交流を重ね、「2013年、2015年、2016年、インドを訪問し共同学術交流」を実施。また2016年には「インド政府のニルギリにあるホメオパシーレメディーの原材料となる植物の薬草園を訪問し学術交流」、2016年に「インド政府CCRH発行のホメオパシー科学リサーチのエビデンス集『ホメオパシー科学 -穏やかな治療法- (日本語版)」をCCRH、JPHMAで共同制作」、マンチャンダ博士自身も、2016年にはホメオパスである夫人とともにJPHMAコングレスで学術発表を行い、日本豊受自然農、函南自然農場を視察。2021年のJPHMAコングレスでは「インドにおけるホメオパシー医学の状況と新型コロナウイルス感染症対策について」をテーマに発表を行う。

インドでは今日では国民の半数がホメオパシーに親しみ、モディ首相自身もホメオパシーを積極推進、ホメオパシー医学の祖、ドイツ人医師サミュエル・ハーネマンの生誕を祝福し、4月10日をインド政府は「世界ホメオパシーDay」と定め、原物質がないため副作用がなく経済的に貧しい人にも自己治癒力を触発することで安価で健康向上に貢献するホメオパシー普及を推進している。


【来賓祝辞】
今、食が危ない!自然農の復興 インド政府が推進するAYUSH(伝統医学)からの展望

Dr ラジ K マンチャンダ
インド共和国 デリー政府 AYUSH局長

由井寅子博士とそのチームが食に関するこのシンポジウムを開催頂いた事にただただ敬意を表したいと思います。
特に『今、食が危ない!自然農の復興』というテーマは、現代起こっている食の危険を減らす事に貢献するでしょう。

私は、この問題についてAYUSHからの展望についてお話しします。

超加工食品とも呼ばれる化学加工食品は、精製された原料や人工物質しか含まれていない事が多く、栄養価はほとんどありません。化学調味料、着色料、精製炭水化物、トランス脂肪、甘味料が添加される傾向があります。このため、それらは世界中で、肥満や病気の主な原因となっています。ここ数十年で、超加工食品の摂取量は世界中で劇的に増加しました。これらの食品は現在、世界の多くの地域で人の 1 日のエネルギー摂取源の 25 ~ 60% を占めています。

食原病(食品由来疾病)の世界的負荷推計に関する 2015 年 WHO 報告書では、細菌、ウイルス、寄生虫、毒素、化学物質を含む31種類の食品由来物質 によって引き起こされる疾病負荷の世界的および準地域レベルでの初めての推定値が示されました。それには、年間6億人以上に食原病が発生し、42万人が死亡する可能性があるという事が強調されています。 WHO は、安全でない食品に関連した公衆衛生上の脅威に対し、世界的な予防、検出、対応を促進するため、国家の食品管理システムを強化することを目指しています。
アーユルヴェーダ科学では、食べ物は生命を支える 3 本の柱の 1 つとして挙げられています。古典的なアーユルヴェーダの原本は、自然源の多様性、季節、場所、そして生理学的および病理学的状態におけるそれらの特定の機能と関連した食材の性質と特性、精製と準備過程、摂取方法、食の安全性、そして食の保存に至るまで、食に関する一連のテーマをカバーしています。
このことは、その特徴、検査技術、毒の入った食品によって引き起こされた疾患、そして、その様な食品摂取によって生じる症状の管理療法も指摘されています。
その原本には、相性の悪い食品の概念についても記載されています。何を食べる必要があり、何を食べないでおくべきか、という事です。

アーユルヴェーダにおける健康と栄養に関する認識論的観点は、生物医学や現代栄養学とは大きく異なります。しかし、現代の知識は、システム生物学、個別化医療、科学全般におけるよりホリスティックなものへの移行というより広範な文脈において、これらの概念を再発見し、進歩させています。学際的な研究は、食品と健康科学の境界を押し広げるだけでなく、現代の健康状態に対する実用的な解決策を提供するためにも重要なものになるでしょう。

オーガニック食品の生産と消費は、過去 10 年間、世界中で次第に増加しました。科学的証拠はまだ不足していますが、オーガニック食品は最適な健康状態を維持し、慢性疾患を発症するリスクを軽減するのに貢献しているようです。これは、従来の農産物と比較して、植物由来の有機食品に含まれる生物活性化合物の含有量が高く、カドミウムや合成肥料や農薬などの不健康な物質の含有量が低いためと考えられます。

有機農業、自然農業の利点について、ホメオパシーのクライアントにだけでなく一般の人々にも定期的に教育されている由井寅子博士に改めて敬意を表します。私自身、数年前に日本を訪問させて頂きました。
そして彼女の農場を訪れたことがありますが、彼女が自然農の畑を大変うまく維持されており、そして、日本の皆様を助けている事に感銘を受けました。

15年連続でこのシンポジウムを開催しておられる事に対し、改めてお祝い申し上げます。
このイベントの成功を心よりお祈り申し上げます。この非常に重要なテーマについて私の意見を皆様と共有する機会を与えて頂き、心より感謝致します。ありがとうございました。

参考文献・注釈
AYUSH:インドの伝統医学総称 アーユルヴェーダ(A)、ヨガ&ナチュロパシー(Y)、ユナニ医学(U)、シッダ医学(S)、ホメオパシー(H)の頭文字
1. Processed foods: Health risks and what to avoid (medicalnewstoday.com)
2. Food safety (who.int)
3. Payyappallimana U, Venkatasubramanian P. Exploring Ayurvedic Knowledge on Food and Health for Providing Innovative Solutions to Contemporary Healthcare. Front Public Health. 2016 Mar 31;4:57. doi: 10.3389/fpubh.2016.00057. PMID: 27066472; PMCID: PMC4815005.
4. J. Kumar, Chapter 6 – An ayurvedic perspective on food safety, Editor(s): Rajul Kumar Gupta, Dudeja, Singh Minhas, Food Safety in the 21st Century, Academic Press, 2017, Pages 71-81, ISBN 9780128017739, https://doi.org/10.1016/B978-0-12-801773-9.00006-6. (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B9780128017739000066)
5. Hurtado, Sara & Tresserra-Rimbau, Anna & Vallverdú-Queralt, Anna & Lamuela-Raventós, Rosa M. (2017). Organic food and the impact on human health. Critical Reviews in Food Science and Nutrition. 59. 1-11. 10.1080/10408398.2017.1394815.
(日本語訳:CHhomスタッフ)

来賓祝辞動画は以下リンクをクリックするご覧いただけます。(「午前の部」のボタンを押して、1時間56分41秒ぐらいから) https://stream.homoeopathy.ac/live/live20230603cartr456Ub6SPM/index2.php

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