5月13日 午後の様子

来賓発表:
安田 節子氏(「食政策センター ビジョン21」主宰人、NPO法人「日本有機農業研究会」理事)
『多国籍企業のために脅かされる食の安全』

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日本消費者連盟で、食の安全についての活動に長年取り組み、食品添加物の問題、農薬の問題、また遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンを立ち上げ事務局と務めてきた安田節子さんからは、世界に誇る食品衛生基準のからくりを解き明かす発表となりました。

食べものはいのち、健康を守るものでなければなりません。そのために食品安全規制があるのです。しかしこの安全規制は国民の健康を守るようには機能していません。

具体的には、輸入食品受け入れのために急速に進む安全規制の緩和の実態や、米国の規制緩和要求の内容、TPP日米2国間合意などの話、輸入果実の防かび剤の例をあげ、米国農薬基準の受け入れでは、農薬の多くを食品添加物として指定するすり替えで、国民の食の安全をないがしろにする農薬まみれの食品輸入となる点への事実が伝えられました。

また遺伝子組換え(GM)食品の問題についてふれ、日本が世界でもGM食品の消費先とされている実態が報告され、世界の潮流に逆行する実態が報告され、日本でのGM作物栽培への危惧や、最近わかってきたGM食品の安全性の問題、そしてさらに日本では、遺伝子組換え食品の表示制度を改悪して消費者が購入する場合にGM食品であることがわからなくなるような制度の実態なども説明されました。

2017年4月から始まった日米経済対話の実態に触れ、日米FTAは結んではならない、またTPPとは貿易協定の名を借りたグリーバル企業による国内法規制の無力化である点を力説いただきました。

来賓発表:
山田 正彦氏(弁護士・元農林水産大臣、日本の種子(たね)を守る会顧問)
『種子法廃止とこれからの日本の農業について』

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弁護士で元農林水産大臣、日本の種子(たね)を守る会顧問の山田正彦さんからは、4月から廃止された主要農産物種子法によって、日本のコメ、麦、大豆が守られてきた点に触れ、一方、農業強化支援法8条3項では銘柄を集約して、大手企業の為に数種に絞られることになるという政策の問題点が指摘されました。また写真を見せながら農業試験場での原原種の栽培や、県による原種の栽培、種子センターによる種子の調整の様子なども紹介されました。

次に主要穀類の種子が民間に開放されると種子の価格が4~10倍になると危惧され、F1種に変わることで農家が自家採種できずに毎年新たな種を種子企業から購入しなければならなくなる問題点などにも触れ、食料安全保障の視点からは大きな危機であることが報告されました。

実際に始まっている民間のF1種の問題については、農家が契約による種子メーカーに従属する形に変わる実態が実際に農家ととりかわせる契約書を例に話されました。

また農業競争力強化支援法8条4項により、これまで日本が蓄積してきたコメ等の原種、原原種、優良品種の知見を民間に提供することになっている点が指摘されました。

仮説として、現在、コメのF1種栽培を推進している国内企業の背景にはグローバル種子メジャーがいて、日本の貴重な種子を育種権の登録や応用特許を申請することで、将来日本の農家も彼らにロイヤリティーを支払う形となり、日本の農家が国際種子メジャーに従属する形の農業に移行する点の危惧にも触れました。

さらにすでにグローバル種子企業は日本のコメでの遺伝子組換えでのコメの作付の準備を進めており、将来日本ではコメ作りで遺伝子組換え米の栽培が始まる点が危惧される点、既に日本は遺伝子組み換え農作物の承認大国であり、セットで使われる除草剤で健康被害が懸念されるグリホサートの残留許容量を日本政府は昨年大幅に緩和している点なども報告されました。

基調講演:
由井 寅子大会長(日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)名誉会長、農業生産法人 日本豊受自然農代表、カレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシー(CHhom)学長、百姓、ホメオパス)
『種子が大事 -日本の食の安全と農林業の未来への提言 Public seed 種は皆のもの』― 人が生きるために何が必要か?―

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日本の農業、食が危機的な状況にある事に際して、由井大会長からは、政治や特定の企業を問題とするこの世的な視点を離れ、食や農業を軽く扱ってきた我々現代人の意識、価値観、生き方にスポットが当てられ、一人一人の気づきへ導く内容となりました。

我々の中にもある楽をして儲けたいという気持ち、無知な人々をだましてでも自分だけ得すればいいという気持ち、日々の食事を軽く扱いお金をかけたくない気持ち、神々への感謝や信仰心を失い、生き物の命をないがしろにする心が、現代の農業と食の危機の背景にあることに触れました。

「世の中が便利になりすぎて、自然と接する機会が減り、自然に打ちのめされたり、自然に対する畏敬の念や自然からの愛を感じる経験が少なくなってしまったことで、我々は神仏から生かされ、愛されているという感覚を忘れている。そしてそれは、我々と同じように命を繋いでいる生き物たちへの尊厳を感じられなくなっている。

その結果、微生物、虫、ミミズなど沢山の尊い命が生きている土に、化学肥料や農薬をまき、その命が失われることに心が痛まない人々が増えているという事。微生物も野菜も人間が愛情を注ぎ、感謝すれば、それに応えてくれ全ての生きとし生けるものは物のように扱われると、生きる気力が萎えてしまうという事。」

「母性を開花させる事で感謝と愛、生きとし生けるものへの利他心が生まれます。温かい家庭を築くこと、仕事や日常の中で利他の精神でやり続けること、信仰心をもって、清く正しく生きようとすることが、日本の食と農業の復興に繋がり、自分を含めた生きとし生きるものへの尊厳へと繋がるのです。」由井大会長からの崇高なメッセージが届けられました。

また、臨床ケースでは、日々の悪い食事が原因で激しい皮膚病と体重の激減、血液の問題を発症した男性に、食の改善とホメオパシーで治癒したケースが紹介され、改めて、家庭の暖かさは、その家庭の「食」に現れるという事、生きる姿勢を変える事の重要性を感じさせる内容となりました。

発表は大きな拍手で幕を閉じました。

体験発表:由井大会長のクライアント

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とらこ先生のクライアントさんがホメオパシー相談会を通して得た気づきの体験談を発表してくださいました。

4年前、私はその頃うつ病でした。体はやせ細り、食欲もなく、お風呂も入れず、歩けないのでトイレは這って行っていました。毎日死ぬことばかり考えていました。何年もいわれたとおり薬を飲みましたが、いっこうによくなりません。そんな時「ホメオパシー」を知り、とらこ先生に相談会をしていただくことになりました。

とらこ先生の相談会を通して母親との関係と向き合い、霊性を高めるための祝詞と般若心経を唱えることをはじめました。

私はずっと母の目で自分を見て、否定し、あら捜しをし、自分に意地悪だったことに気づきました。いっぱい泣きました。これからはもっと自分に優しくしてあげようと思いました。その後、自分の中が愛でいっぱいになってそれがあふれていることに気づきました。自分の中が満たされている。いままでにない、すごく不思議な感覚でした。

自分の美しさに気づき、内面の輝きが外見にも表れ美しくなったこの方は、日本の女性のために「自分を好きになるサロン」をつくるという夢を持ち、数カ月後にはオープンする予定ということでした。40年以上も、自分の人生を生きてくることができなかった私に、生きる気力と希望を与えてくれたホメオパシーととらこ先生に、心から感謝しますと述べられ、発表は終了しました。

パネルディスカッション

講演者の山田正彦さん、杉田かおるさん、安田節子さん、小名木善行さん、来賓の南出喜久治さん、由井寅子大会長が登壇しシンポジウムを通しての登壇者の感想のシェアの後、参加者からの質疑に各登壇者が答える形でのパネルディスカションとなり、参加者の皆さんと、種子の問題、日本の農業の未来や食の安全について、これからどうしていけばよいか、解決策や希望を共有化する場となりました。

パネルディスカッションの冒頭では、3年前にもシンポジウムに参加され、種子法廃止についても自らのブログで「食料安保と土地安保」などの論説を発表されて持論を展開されている南出喜久治弁護士も急遽登壇され、「天孫降臨の時に稲穂、稲とは限らないのですけれど、種をいただいて降臨してきたという神話は日本ぐらいなもので、その事を考えると稲というのは何かなと思うと命の種、「命の根」を略したらイネ(稲)になる。そういう思いで、我々はこの種子というものを非常に重要に考えなければならない」と述べ、現在の政府のやり方を「野合」と批判し、危機的な状況を打破していく対策として、一人ひとりが自らを守るという意識で対処していくことの必要性を訴えた。

小名木善行さんからシンポジウムを通しての感想として、「種って大事です今日、改めて認識させていただいた気がします。町によって村によって地域によって同じ野菜でも同じ植物でも同じ種でも、例えば九州で生まれた種を関東で育てたらやっぱり違う。実は縄文時代のストーンサークルって皆さんご存じでしょうか。環状列石というのがあるのですけれど、環状列石というのを調べてみるとどうやらいろんな所からたくさんの村人達が集まって村ごとにブロックを決めて作ったようなのです。で、ストーンサークルの出来が村によって全然違うのです。どういうことかと言うと村ごとに自己主張しているのです。多様性というものをそのまま内包した多様性を認めることによって1万7千年という途方もない長い期間に渡って、平和な文化を築き上げてきたのが私達の祖先の縄文人じゃないかと思うのです。多様性というのは今の現代の世界から見たらむしろ対立、争い、紛争の種になってしまう。何でそうなっちゃうのか。根っこがないからなっちゃう。根っこは何から生まれるかと言ったら種から生まれる。私達の日本人の種というのは何でしょう。それはやっぱり喜び溢れる楽しい国。やっぱり天壌無窮の神勅があって、天照大神と言う太陽の恵みがあって、その感謝と共に国土を大切にしてきた。国土と共に生きてきたと言うことからたぶん今の私達日本がある。その日本を大切にしていく。それは私達一人一人が根っこを持つこと。根っこのために種を持つことじゃないかと思います」と。

山田正彦さんからは「私も若い時代農業と取り組んで、大規模化をやって、若いときに4億の借金を作り間違いだったことに気づいた。何も科学的に合理的で大規模だというのがいいものでなく自然なものが一番。私が大臣になった時に農水省の講堂に課長以上みんな集めて最初に言ったのは「大規模化、合理化、企業化の農業は失敗である。その犠牲者は私であった」と。これからはヨーロッパ型のいわゆる家族農業と兼業農家でいいと。また、食料を生産する農業は工業とか商業とは違い、生きて行く命のためのものから、ヨーロッパでは農家収入の8割ぐらいは所得を保証している。大臣の時代に直接支払いで農家に個別所得保証を実施しました。そうしたら、たった6千億ですがその次の年、農家収入が右肩下がりだったのがなんと1年間で17%上がりました。だから日本でもやれば農家は食べていける。農業で食べていける。そういう社会を作ることが出来る。ミサイルを打ち落とす一機だけで6千億です。それ2機分あったら日本の若い人もみんな農業で食べていける。本当に太陽の恵みで自然の中で心豊かに食べていける、そういう世の中にみんなでやって行ければいいな。私から皆さんに一つお願いがあるのですが、このシンポジウムは日本の種を守る会も後援させていただいています。今日は事務局の秋元さんと杉本さんが見えています。種子法廃止の動きがわかり、さらに印鑰さんと安田さんと一緒に昨年、種を守る会を立ち上げました。今結構その活動が広がってきていて、種子生産は企業に任せるのではなく、少なくとも米、麦、大豆は公共の種子としてやって頂きたいと言う声が各市町村から既に百ぐらい上がってきました。県においても2つの県が全員一致で可決して、そして今新潟県と兵庫県と埼玉県では条例まで作れるようになりました。そしてこの前6野党が種子法廃止撤回法案を国会に出しました。だから我々の小さな、小さな、一人一人の動きがいつの間にか大きな、大きな流れになって行く。今日、豊受さんの言ってみればまさに自然の太陽の恵み、そういった流れで、これはよくまたみんなの種、種という問題から種を守る会というのにも是非ご協力いただいて、入っていただきたい。4日前TPP違憲訴訟の弁護団の人たちと議論しました。その中でTPPそのものが違憲だと私達は本当に思っていまして、上告しています。その中で水も大事だけれど、同時に種子というのは最も大事じゃないか。種についても裁判でやろう。これは司法に正しいことを訴えていこうと言う事で、種の問題の裁判をすることにしました、種苗法改正で今まで自家採種が出来てきた自然の種子を、政府がそれを規制すると言う事は、自由に国民がどんな職業でも種を取ってそれを植える、増殖する、それを加工すると言う権利を侵害すると言う事は許されない。そういう裁判を起こそうと思っています。原告になってご協力いただいてなんとかこの問題の裁判をやっていきたい。なんとか種を守りたい。」

安田節子さんは参加者から遺伝子組み換えと一般の品種改良との違いを聞かれ、「通常の品種改良は近縁種の中だけで新しい品種を作っていく。ところが遺伝子組み換えは種の壁を越えて違う生物の遺伝子を入れる。モンサントのランドアップをかけても枯れない組み替えの大豆というのは微生物の遺伝子を導入したり、微生物の生物農薬、バチルス、BT菌という土壌菌の殺虫タンパクを作る遺伝子を作物に入れて全てに植物に殺虫毒素が出来るようになった。種の壁を越えて交配と言う事は自然界では絶対にない。遺伝子組み換えはそういう自然の法則の種の壁を人間の技術で破壊して人間の都合のいいものを作ると。思いも掛けない毒素が出来たり、食べて安全かどうかと言うのはまだ全く保証できない。」と。また先ほどの講演で言い足りなかった部分として「何故この公的種子を止めさせて民間の種子に変えさせるか。それは彼らが自分たちの種を売ることで儲かる。どうして儲かるかというと種に特許がかけられるようになったから。種に特許を掛ければ農家の種取りは禁止。種の交換も禁止、種の保存も禁止で犯罪にすることができ、農家は毎年種子を買わなければいけなくなる。主食の穀物で毎年世界中の農家が買うと莫大な利益になります。問題の根本は種に特許を認めてはならないと言うこと。自然の中、延々と農家がいいものを選んで選抜して今ある種子で私達がその恵みに預かっている。それを私がモンサントだとするとその中にとてもいい性質があると。その性質を自分が見つけたんだと言って特許を掛ける。特許を掛けるとその品種は全部モンサントのものになります。生物特許を認めると言う事はつい最近で、世界の先進国が認めるようになったが、最近ドイツは禁止。種に特許を取ってはいけないと法律を改正して決めました。日本も既にこの生物特許を認めていますが、私たちはこの種子法も含めて種への特許は違法であると言う風に日本もしていかなければいけない。」と訴えた。

杉田さんは自然農をやっていての感想を聞かれ、「人間が野菜を「作る」、作物を「作る」、そういう言い方自体がすでにエゴなんじゃないかな。もう自然は本当に支配しなくても自然に育つものだし生きて行くものだし次に繋がっていくものだなと思いました。その自然農の中の畑の中の生きている物はみんな魂は生きている。それは誰のものでもないという自由なものだと言う事を私は教わったので、本当に気楽に楽しむ形で自然農に入られたらいいかなと思います。もしかしたら千四百年前に聖徳太子が蜂子皇子様に持たせた種が最上紅花でそれが山形でずっと栽培されていて、今回それが豊受の農場に栽培が引き継がれ、今回、化粧品になったかもしれない。ちゃんと最上紅花を守っていただけるような形で残っていただければ3万年続いている日本。その伝統が守られるのではないかなと思います。ありがとうございました。」

由井大会長は、自然型農業に合う土づくりの秘訣を聞かれ、「土を増やすにはなんとしても微生物です。微生物にはエサ、私達は落ち葉堆肥を中心にやっています。もちろん雑草でも発酵するものであれば何でもいい。みんな発酵させて土に戻すのです。微生物の食べ物をふんだんにあげるというのが大事です。微生物の食べ物のは中心はクヌギの葉っぱです。だからクヌギに足をむけて寝られないのです。クヌギは不細工な顔をして葉っぱは散るし、でこぼこになっているし可愛くもないしね。ところがクヌギは暖炉で燃やすと1時間以上も燃えてくれる。私はこれからの産業だと思って林業をやろうと思っています。女性でも出来る林業をやりたい。皮を剥げば枯れていて間引きが出来ると言う皮矧ぎでの間伐方法があります。そうすると1年後にこれは自然に枯れて倒れて行くんです。素晴らしいやり方がありますので広まればと思います。先ほどの種の特許のお話ですけれど、自分が大豆の種になったとすると、寝ているうちにこいつは鼻が低いから、じゃあ鼻を高くしようと、遺伝子を組み替えて鼻を高くして、あれ、鼻、高くなっているわ。これは遺伝子組換え企業が高くしたから、企業のものですよと言っているようなものですね。これは大豆の種子に失礼じゃないの。それも知らぬ間に。まず大豆の種子自身が許可出したのでもないのにね。こんなBT毒素の遺伝子なんか入れられちゃって嫌でしょうねと思って。でもこういう事ってやっぱりどう考えても自然じゃないからいつかは潰れていく。でも消費者が賢くならないと潰れていかない。消費者が賢くならなければいけない。そういう不自然なものは買わないんだよ。こぞって買わないんだ、みんなで。それをやりましょうよ。みんなで助け合いましょう、こういう事を感じました。」と発言

閉会の挨拶

最後は豊受メンバー一同も壇上にあがり、由井大会長の締めの挨拶をもって、第7回 日本の農業と食のシンポジウムは大盛況の中、閉幕いたしました。

ご来場の皆様、誠にありがとうございました。
また来年、次回のシンポジウムでの皆様のご参加をお待ちしております。