川田薫(かわだ かおる)
川田研究所・代表取締役
昭和9年生まれ。理学博士。東京理科大学物理学科卒。東京大学地震研究所、東京大学物性研究所を経て、三菱金属中央研究所に入社。平行して科学技術庁、通産省などの評価委員、研究員を歴任後、昭和63年に独立、川田研究所を設立。科学技術庁の外郭団体「科学技術振興事業団」の「さきがけ研究21」でミネラルの研究を行う、さまざまなミネラルの作用を発見し、その成果を応用した生命の起源探求を行う。高野山大学密教文化研究所委託研究員として、空海研究家でもある。
超微量の世界―ミネラルと水を中心に―
現代農法の最大の課題は「連作障害の克服と病害虫対策」です。まず、連作障害は同じ畑に同じ作物を繰り返し栽培するために起こるもので、作物が養分を選択吸収したくても養分が欠落しているために吸収できないために起こることが第一の理由です。もう一つの理由は養分が欠落した土壌環境に合った微生物が増え、作物に悪影響を及ぼす、これが第二の理由です。
このように連作障害の原因は非常に単純です。この解決策は欠落した養分を補えばいいのです。これによって土壌環境が改善され、その環境に合った微生物が増えることによって微生物からの害を防ぐことができるのです。この際の養分がミネラルです。
一方病害虫の問題は、化学肥料や農薬に依存しすぎたために、軟弱の作物が育ち病害虫に侵されやすくなったことと、農薬の使用によって病害虫が強靭になったために作物が簡単に侵されるようになったのです。つまり、病害虫の問題は化学肥料や農薬から脱却して強靭な作物を作るしか方法はないのです。もう一つは、病害虫が近づけないような環境にすることですが、この作法は始まったばかりで、今後の大きな課題の一つです。
以上の連作障害と病害虫対策の基本はミネラルによって克服できることを次のように具体的に述べてまいります。
① ミネラルとは何か
② ミネラルの働き
③ 水とミネラルの相互作用
④ ミネラルバランス
⑤ 微生物叢の変化
⑥ 酵素活性
⑦ 土壌消毒による微生物の問題
⑧ 土壌微生物に対するミネラルの影響
⑨ 土壌のソフト化
⑩ 植物の根の状態
⑪ 各種ミネラル液について
ここで使用するミネラルは超微量である、という点が重要です。
最後に、エネルギーに満ちた水とミネラルの作用によって農業がどのように変わっていくのか、今年の諸課題について具体的にご報告いたします。